【初心者向け】SD-WANとは?
その仕組み、メリットなどを解説

【初心者向け】SD-WANとは?その仕組み、メリットなどを解説

近年、ビジネス環境や働き方の変化にともない、ネットワークの効率性と柔軟性が求められるようになっています。そのなかで注目されているのが「SD-WAN」です。

この記事では、SD-WANの基本的な仕組みや特長、注目される背景などを分かりやすく解説します。

1. SD-WANとは

「SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)」は、ソフトウェアによってWANを効率的に制御・管理する技術です。

「WAN(Wide Area Network)」とは、地理的に離れた拠点同士をつなぐネットワークを指します。SD-WANは、ソフトウェアでネットワークを制御・管理するSDN(Software-Defined Networking)の技術をWANに応用したものです。

1.1. SD-WANの仕組み

SD-WANでは、ソフトウェアによって通信や回線を制御・管理します。具体的には、アプリケーションレベルで通信を識別し通信経路を振り分けたり、複数の回線を仮想的に束ねて使用したりすることが可能です。

SD-WANの大きな特長は、閉域ネットワークやインターネット回線などの回線種別に縛られず複数の回線を利用できる点と、通信内容やトラフィック状況に応じて通信経路を最適化できる点が挙げられます。

2. なぜ今SD-WANが活用されているのか?

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続いて、なぜ今SD-WANの活用が推進されているのか、その背景を解説します。

2.1. 従来型WANの課題

近年、DX推進などを背景に、クラウドサービスを活用する企業や組織が増えています。クラウドサービスの活用を進めるうえで、インターネットとの通信帯域を確保する必要がありますが、従来型WANは本社やデータセンター経由でインターネットに接続する構成が一般的で、通信の遅延や帯域不足が発生しやすいという課題があります。
また、帯域の拡張には費用・時間ともに大きなコストがかかる点も課題の一つです。このような背景から、従来型WANの課題を解決する手段としてSD-WANが注目されています。

DXの詳細は以下の記事で解説しています。

2.2. 多様な働き方の広がり

現在ではリモートワークやハイブリッドワークが一般化しており、社員がどこからでも企業のネットワークにアクセスできる仕組みが必要となっています。
その点、SD-WANは場所を問わず安全で快適な通信環境を提供できることから、急速に普及が進んでいます。

2.3. 国内SD-WAN市場の急速な発展

IDC Japan株式会社の調査によると、2023年の国内SD-WAN市場は前年比20.6%増の147億9,000万円に達しました。さらに、2023年から2028年までの5年間で年平均11.2%の成長を続け、2028年には251億1,500万円規模まで市場が拡大すると予測されています。

この高い成長率を見ても明らかなように、SD-WANは今後のネットワークに欠かせない技術として浸透しています。

3. SD-WANの活用事例

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それでは、SD-WANの活用事例はどういったものがあるのでしょうか?実際の活用事例を見ていきましょう。

ある企業では、働き方改革の一環として、端末から直接インターネットに接続しながら、通信のセキュリティを確保するという新しい要件に対応する必要性が生じていました。
そこでSD-WANを導入し、アプリケーションごとに通信を振り分け、各端末からセキュアで快適なインターネット通信を実現しています。
端末のアップデートに起因する大量のダウンロード通信に対しても、主要な業務通信に影響を与えることなく対応できるようになっています。

また、社内のIT標準化を進めるため、インターネットやクラウドサービスを積極的に活用することが検討され、多様性と柔軟性に対応するネットワークの構築のためにSD-WANを導入する企業も出てきています。
結果、この企業ではインターネットやクラウドサービスの利用ニーズに柔軟に対応できるインフラ環境が構築できました。セキュリティレベルの向上や回線コスト削減などの効果にもつながっています。

4. 知っておきたい!SD-WANを導入するメリット

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SD-WANの導入でどのような効果を得られるのか、その主なメリットをご紹介します。

4.1. ローカルブレイクアウトが可能になる

「ローカルブレイクアウト」とは、各拠点がインターネットに通信する際、本社やデータセンター経由ではなく拠点から直接インターネットに接続する仕組みです。

従来のWAN環境ではインターネット通信を本社やデータセンターに集約することが一般的でしたが、インターネット通信量が増加している昨今では、本社やデータセンターの回線コストが高騰する要因となっています。
一方で、SD-WANを用いたローカルブレイクアウトを活用すれば、各拠点からインターネットへ直接通信できるようになり、本社やデータセンターへの通信集中を防げます。

SD-WAN導入によりローカルブレイクアウト環境を構築すれば、回線コストや回線逼迫のリスク削減につながるでしょう。近年、利用拡大が進むクラウドサービスの通信をローカルブレイクアウトに流すことで、回線のひっ迫防止やコスト削減を図っている企業も多くなっています。

ただし、ローカルブレイクアウトは各拠点からインターネットに直接通信する仕組みであり、本社やデータセンターのセキュリティ機能を経由せず通信がおこなわれる可能性があります。ローカルブレイクアウトを導入する際は、自社のセキュリティ設計を確認したうえで、ローカルブレイクアウト用のセキュリティ対策を検討するとよいでしょう。

4.2. 回線の使い分けが可能になる

「SD-WANを導入すると、通信内容や回線利用状況などに応じて最適な経路を選択できるようになります。重要なデータは高速かつセキュリティ性の高い専用回線で、一般的なデータはコストの低いインターネット回線で送るなど、効率的な通信を実現できます。回線の使い分けによって、重要な通信の輻輳防止や回線コストの削減につながるでしょう。

4.3. 通信状況が可視化される

SD-WANでは、各回線の利用状況やトラフィック量などをリアルタイムで確認できます。回線にトラブルや逼迫が発生した場合もすぐに状況を把握できるため、迅速な対応が可能となります。また、通信内容を分析することで、今後どの程度の回線・帯域を確保すべきなのかの予測も立てやすくなるでしょう。

クラウドサービスやIoT機器の活用などを背景に、世界的に今後もトラフィック量の増加が続く見込みとなっています。SD-WANを用いて通信状況を可視化するとともに、増加が見込まれる通信の帯域を柔軟に拡張していくことが今後ますます重要になるでしょう。

4.4. リモートで設定変更ができる

SD-WANには、新しい拠点でSD-WANを利用する場合にエッジ端末を回線につなぐだけで自動設定できる「ゼロタッチプロビジョニング」という機能が備わっています。リモート環境から設定変更ができるため、各拠点での作業が減り、WAN構築にかかる工数やコストを削減できます。人材不足で各拠点にネットワーク担当者を配置する余裕がないという企業でも、SD-WANであれば導入・運用がしやすいでしょう。

5. SD-WAN導入時に意識すべきポイント

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SD-WAN導入前に確認しておくべきポイントもチェックしておきましょう。

5.1. 適切な人材確保が必要

SD-WANを適切に運用・管理するためには、ネットワークやセキュリティの専門的な知識を持った人材が必要です。人材を確保できないまま導入を進めると、WAN全体のトラブルにつながり、長時間業務が停止するリスクが想定されます。もし社内で人材確保が難しい場合には、専門企業のサポートを受けることも検討しましょう。

5.2. 導入時の構成変更が必要

SD-WANへ移行する際には、既存のネットワーク構成を大きく変更する必要があります。業務への影響を最小限に抑えるため、計画的に導入を進めなければなりません。繁忙期を避ける、休日に切り替えをおこなうなど、導入時期のタイミングを精査しましょう。

5.3. 正しい管理とセキュリティ対策が必要

SD-WANでは柔軟な通信の振り分けができますが、誤った振り分けをおこなえば通信が逼迫するリスクが高まります。
また、SD-WAN自体に高度なセキュリティ機能が備わっているわけではないため、機密性の高い情報をセキュリティ性の低いネットワークに流してしまうと情報漏洩が発生するリスクもあります。リスクを回避するためにも、適切な設計とセキュリティ対策が重要です。

5.4. 場合によっては向いていないケースもある

企業規模や運用環境によっては、SD-WANの導入効果が限定的になる場合があります。例えば、サーバーやネットワーク機器が少なくトラフィック量が多くない小規模な拠点では、導入コストが効果を上回る可能性があります。導入拠点の規模や業務内容を考慮し、導入の必要性を慎重に判断することが大切です。

6. QT PROのSD-WANサービスで快適なネットワークを実現

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SD-WANは快適なWAN環境を実現するために重要なソリューションですが、WANの設計が必要なために求められる専門性が高く、企業によっては導入のハードルが高いのが現状です。

QT PROでは、柔軟かつセキュアなネットワークを実現するSD-WANサービスを提供しています。また、現状をヒアリングして最適な設計をサポートする設計支援や、SD-WANルーターの設置を代行するオンサイト工事などもご提供しています。

SD-WANの導入を検討されている方も、SD-WANを導入しているもののコストが高く設計を見直したい方も、ぜひお気軽にお問合せください。

7. まとめ

SD-WANは、現代のビジネス環境におけるネットワークの課題を解決するために欠かせない技術です。SD-WANを導入すれば、通信内容やネットワークの状態に応じて、最適な通信を実現できます。

一方、WAN環境は設定変更やトラブルによる影響が大きい部分です。SD-WANの導入や運用にあたっては専門的な知識・スキルを持つ人材が必要になるため、専門企業のサポートを受けながら対応を進めましょう。

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