DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?基礎知識と企業がすべき取り組み

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?基礎知識と企業がすべき取り組み

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業が増えています。しかし、DXの正しい理解や効果的なアプローチができていないと感じる経営者、担当者の方も多いのではないでしょうか。

今回は、DXの定義やIT化との違い、推進するメリットや具体的な取り組み方法などをご紹介します。

目次

1. DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)は2004年にスウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念で、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させる」ことを意味しています。もともとは社会におけるさまざまな側面にIT技術を活用する広義の概念でしたが、ビジネスシーンにおける狭義の概念も広まるようになりました。

1.1. DXの必要性と注目される背景

DXが必要とされる大きな理由に「市場ニーズの複雑化と変動の急速化」が挙げられます。
IT技術が発達した現代では、誰でもかんたんに多くの情報を得ることができます。結果として多様なニーズが生まれ、そのニーズが移り変わるスピードも早くなっているのです。

企業として市場ニーズの複雑化や変動の急速化に対応するためには、以下の3点を押さえる必要があります。

  1. 市場ニーズのキャッチアップ
  2. 的確な経営判断をおこなうための情報把握
  3. 変化に対応できる体制の合理化

これらを実現するためには、IT技術を活用して情報を収集・可視化するとともに、生産性向上や業務効率化を図ることが求められます。誰でも情報を得やすくなった分、DXを達成する企業としない企業では大きな差が生まれ、企業の存続に重大な影響を及ぼす可能性があります。

また、DX推進の背景として経済産業省の「DXレポート」で提示された「2025年の崖」があります。
「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に発表したDX推進に関する予測です。国内においてDXが進まなかった場合、2025年以降に12兆円にもおよぶ経済損失が発生すると試算されています。
生産性向上や業務効率化、レガシーシステム刷新といったDXの取り組みは、企業にとって急務といえるでしょう。

1.2. IT化(デジタル化)との違い

DXと混同されやすい言葉として「IT化(デジタル化)」がありますが、IT化は既存の業務をデジタル(IT技術を使用したツールなど)に置き換えることを指します。
IT化は「手段」である一方、DXにはITを活用して競争上の優位性を確立すること、つまり新しい価値を生み出すことまでが含まれます。

IT化はさらに「デジタイゼーション(デジタル化)」と「デジタライゼーション(プロセスそのものの変化)」に分けられますが、時系列としてはデジタイゼーション(デジタル化)からデジタライゼーション(プロセスそのものの変化)、そしてDXという流れになります。

1.3. AI活用との関係性

近年、生成AIをはじめとしたAIの技術を活用してDXに取り組もうとする企業が増えてきています。しかし注意しなければならないのは、AI活用はDXを実現するための手段の一つであり、AIの導入だけでDXが達成されるわけではない点です。

例えば、生成AIを社内で利用できるようにしたとしても、従業員が業務にどう活かせばよいのか分からない状態ではDXが達成されているとはいえません。AIの導入時には、「何を実現するためにAIを活用するのか」を明確にしておきましょう。

2. ビジネスシーンにおける「DX」とは

ビジネスシーンにおける「DX」とは

ビジネスシーンにおけるDXには「新しい価値の創出」という意味合いが含まれます。そこには、これまでできなかった事業の立ち上げや市場の開拓、古い仕組み・システムの見直し、またそれによる費用・時間的コストの削減などを実現し、ひいては企業を根本的に見直すことまでが含まれます。

具体的にはIT技術を活用して、就業環境やフローの見直し等を行い、業務改善を図ります。これにより、効率化や新しい価値の創造を目指します。
例えば業務のペーパーレス化やビジネスチャットの導入といったテレワーク環境の整備が挙げられます。

また、設備を見直すことで提供するサービスの品質向上・範囲拡大などを目指します。
例えば、お客さまへ提供しているサーバーなどの機器をオンプレからクラウドに移行することで、サーバー管理費用や保守・メンテナンスのための交通費や時間を削減できるだけでなく、対象顧客や地域を広げることも可能となり、新たな価値の創造にもつながります。

QT PROでは、ペーパーレス会議サービスやビジネスチャット「direct」などのサービスを提供しています。ビジネスシーンにおけるDXの第一歩として、ぜひご検討ください。

パブリッククラウドサービスである「QT PRO IaaS」や自社のネットワークと大手パブリッククラウド事業者間を閉域網で接続する「QT PRO クラウドダイレクト」などのサービスも提供しています。導入のお悩みや料金など、お気軽にお問合せください。

3. DXレポートからみる近年のDXの動向

DXレポートからみる近年のDXの動向

経済産業省では、企業におけるDXの推進のため、DXに関する議論や方針をまとめた「DXレポート」を公開しています。ここからはそれぞれの資料について解説します。

3.1. DXレポート

2018年9月に公開された「DXレポート」では、2025年の崖というキーワードが初めて登場し、レガシーシステムからの脱却を主軸にDX実現のシナリオが公開されています。

3.2. DXレポート2

新型コロナウイルスの感染拡大が発生したあとの2020年12月に公開された「DXレポート2」では、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急事態の発生などに迅速に適応するためにはレガシーシステムの刷新だけでなく、企業文化の変革が必要であるという点が強調されたレポートとなっています。

3.3. DXレポート2.1、DXレポート2.2

2021年8月に公開された「DXレポート2.1」、2022年7月に公開された「DXレポート2.2」では、個々の企業では予算や人材などの問題でなかなか進まないDXに対し、産業全体での変革の必要性を説き、変革実現に向けた具体的な方向性やアクションを示しています。

またDX推進指標の経年推移では、自己診断に取り組む企業が増加していること、規範的な企業は新規デジタルビジネスや技術導入に注力し、全社的な収益向上が達成されていることが記載されています。

デジタル収益向上の特徴としては、全社的変革・経営者の行動指針・グローバル事例参考・継続的変革・顧客志向・組織データ活用・プラットフォーム活用などが挙げられています。

3.4. DX白書2023

IPA(情報処理推進機構)より公開された「DX白書2023」では、昨今のDXの動向が”進み始めた「デジタル」、進まない「トランスフォーメーション」”と評されています。IT技術を活用しようという考えは着実に広まっているものの、どう活用するのか、どう変わっていくのかが明確になっている企業は少ないのが現状です。

他にも日本企業は米国企業に比べ、DXでの開発手法や技術の活用が遅れ、特にスピード・アジリティ向上に必要な手法や技術の導入が遅れていることが記載されています。
またレガシーシステムの残存割合が高く、データ利活用の成果測定やAI・IoTの利活用も遅れており、顧客向けの利活用強化が求められることについても触れられています。

4. DXで得られるメリット

DXで得られるメリット

DXには時間と費用を要しますが、取り組みがうまくいけば経済損失やセキュリティなどのリスクを回避するだけでなく、さまざまなメリットが得られます。
ここでは主なメリットを4つご紹介します。

4.1. 古い仕組みの刷新による事業の持続性の向上

既存のアナログ作業をデジタル化すれば、属人化の解消や作業効率の向上が実現します。また、古いインフラやシステムを刷新すれば担当者が変わっても事業を継続できる環境が整えられるでしょう。

既存のシステムを設計した当時の担当者が退職しブラックボックス化しているシステムや、継ぎ足しの改修で複雑化したシステムを使っている企業は珍しくありません。
刷新のタイミングではコストがかかるかもしれませんが、長期的に見れば費用や時間的なコストの削減につながります。

インフラやシステムの刷新にはそれに対応できるIT人材が不可欠ですが、人材確保が難しい場合はクラウドサービスなどを活用する方法もあります。

例えばMicrosoftのOffice製品は多くの企業で利用されていますが、2025年10月14日にMicrosoft Office 2016およびOffice 2019のサポートが終了します。継続してOffice製品を利用するのであれば、サポートが受けられるMicrosoft Office 365に移行しましょう。

4.2. 働き方改革の実現

DXを推進するためのIT技術は、働き方改革の推進にも効果的です。
例えば、申請承認の印鑑の電子化やワークフロー化に取り組めば物理的な押印が不要になりますし、オンライン会議ツールを使えばリモートで会議ができるようになります。

また、情報資産に対するすべてのアクセスを信頼せず、均等に適切な情報セキュリティ対策を講じる「ゼロトラストセキュリティ」のソリューションを導入すれば、セキュリティを担保しつつ場所に縛られない働き方ができるようになります。

労働人口不足により労働者がより働きやすい企業を選べるようになっている昨今では、DX推進による働き方改革の実現が必須といえるでしょう。

QT PROでも、出社を前提とするこれまでのワークスタイルを変革し、生産性向上や業務効率化を図りつつ、多様なワークスタイルを実現する働き方改革を推進しています。

4.3. 市場における優位性の獲得

BIツールなどを導入して収集したデータの分析・活用をおこない、市場分析や事業計画を練ることで、新しい価値提供の機会創出につながります。結果として市場内での優位性が獲得でき、事業の拡大を図ることができるでしょう。

4.4. 新しい市場の開拓

DXを推進すると、サービスの提供範囲を広げられるとともに、業務効率が向上し、少ない人数でも業務を遂行できるようになります。空いたリソースは新しいサービス・製品の展開に回すことができ、市場の開拓や拡大に取り組むことができるようになるでしょう。

5. QT PROと実現!DX推進に向けて企業が取り組むステップ

QT PROと実現!DX推進に向けて企業が取り組むステップ

ここまでDX推進の必要性とメリットを解説してきました。では、DX推進に向けて企業は具体的にどのようなことに取り組むべきなのでしょうか。DX推進に向けた取り組み方、QT PROのICTソリューションでのDXの取り組みをご紹介します。

5.1. DXの進め方

まずはDXの目標を明確にし、ビジョン(実現したい未来)を設定しましょう。
目標設定ができたら、目標の実現に向けて経営層から全従業員にメッセージを発信し、制度やルールの刷新をおこないます。制度やルールが整ったら、ITツールを充実させ既存の業務を変えていきましょう。ITツール導入の際は、導入だけでなく浸透するまで根気強く勉強会や施策を続けることが重要です。
また、導入したITツールが自社に合っていない場合はその都度、見直しすることが必要です。

5.2. DXを正しく理解する

DXの推進は全従業員の協力なしには成り立ちません。まずはDXとは何か、なぜDXに取り組む必要があるのかを全従業員に正しく理解してもらうことから始めましょう。

5.3. ビジネス戦略とビジョンを明確にする

DXは以下の3つのステップで取り組みましょう。そうすることで、自社に合った戦略やDXにより実現できる未来が見えてきます。DXまでの流れを意識し、戦略的に推進していくことが重要です。

STEP1:デジタイゼーション

デジタイゼーションは身近な業務のデジタル化です。
例えば、紙ベースの申請書を電子化する、ファイルに保存していたデータをクラウドサーバーに移行するなどが該当します。まずは身近な業務からデジタルに置き換えられないかを考えてみましょう。

STEP2:デジタライゼーション

デジタライゼーションとは、業務プロセスの改善・データの蓄積・可視化を意味します。
例えば、デジタライゼーションによって電子化した申請書をワークフローにして複数部署で回覧できるようにする、データを自動で収集・クラウドサーバーにアップロードし可視化できるようにするなどが該当します。

デジタイゼーションでデジタル化したものに対し、仕組みとしてより広い範囲で業務を効率化・自動化するのがデジタライゼーションです。

STEP3:デジタルトランスフォーメーション(DX)

デジタルトランスフォーメーションとは、データテクノロジーを活用した新たな価値の創出を意味しています。
例えば、顧客からの申請を統一したプラットフォームで整備してさまざまな申請をWebで完結できるようにする、産業機器をセンサーやAIで自動化して高い品質を担保できるようにするなどが該当します。

デジタルトランスフォーメーションの段階では、顧客視点で新しい価値を提供できているかが重要な視点となります。

5.4. ITツール導入とセキュリティリテラシーの向上を同時に推進する

ITツールの利用はセキュリティリスクと隣り合わせにあります。ITツールの適切な運用を徹底するために、従業員のITリテラシー向上を図りましょう。具体的には、セキュリティ研修や標的型メール訓練といった取り組みが挙げられます。

QT PROでは自社に合うセキュリティ研修をフルカスタマイズできる「QT PRO セキュリティ研修サービス」や、実際の攻撃を体験していただくことでセキュリティ意識を高める「QT PRO 標的型メール訓練サービス」を提供しています。

5.5. インフラ環境を見直す

DXというとITツールの利用に目が集まりがちですが、インフラ環境の見直しも非常に大きな効果があります。既存のインフラ環境をデータセンターやクラウドサービスなど外部のインフラ環境に移行すれば運用コストの大幅な削減になるだけでなく、クラウド化により事業を拡大することも実現可能です。

また外部へ移行することは、IT人材が社内にいなくても運用・保守がしやすくなる点も大きなメリットといえます。そうした効率化が実現すると、新規事業に集中しやすくなる、他の消費ニーズに対応しやすくなるといった効果が得られます。

通信事業者としてネットワーク、サーバーの運用ノウハウを持ったQT PROでは、高品質・高信頼のデータセンターやクラウドサービスを提供しています。詳しくは以下ページをご覧ください。

6. QT PROと実現する、DXを加速させる3ステップ

QT PROと実現する、DXを加速させる3ステップ

DXを推進しなければと考えつつ、何から手をつけていいのか分からない方も多いでしょう。QT PROでは、以下の3つのステップに沿ってお客さまのDX推進を支援しています。

6.1. STEP1:DX計画・目標設定

DX成功のためには、自社のビジネスや社内の現状を可視化し課題を整理すること、目標を明確にして全社で共通認識を持つこと、推進体制を構築することが必要です。
まずは何が課題となっているのかを洗い出し、具体的な目標を設定して計画を立てていきましょう。

QT PROでは、ネットワーク、クラウド、セキュリティなど多数のICTソリューションを提供しており、さまざまな業界のニーズや課題をサポートしています。

6.2. STEP2:デジタルツールの導入

ひと口にデジタルツールといっても、現在では多様な用途のツールが登場しており、同じ用途であっても多数のソリューションがあります。DX推進において重要なのは、その多数のソリューションの中からいかに自社の目的・目標に沿ったツールを選定するかという点です。

QT PROでは、お客さまの目的や目標に合わせた最適なプランを提案するとともに、30種類以上のソリューションから必要な機能のみをカスタマイズするサービスも提供しています。

6.3. STEP3:データの集積・活用

デジタライゼーションをデジタルトランスフォーメーションに昇華させ、目的を達成するためには、データ集積による管理の一元化とデータの分析・活用が不可欠です。
QT PROは、単なるソリューション提供だけでなく、お客さまの目的達成に向けた伴走型の支援を提供しています。

DX推進を成功に導くポイントについて、『島 耕作』を生んだヒロカネプロダクションが描き下ろした「DX推進編」で公開しています。詳しくは以下ページをご覧ください。

7. 企業におけるDXの導入事例

企業におけるDXの導入事例

最後に、企業において実際どのようなDXがおこなわれているのか、具体的な導入事例をご紹介します。

7.1. DXの進め方

複合型リゾート施設を運営するフェニックスリゾート株式会社さまは、新型コロナウイルスの感染拡大により宿泊客が激減、一時休業も余儀なくされる状況でした。

しかし、そのようななかでも需要回復や新しいニーズの開拓を図るため、さまざまなDXの取り組みを推進しています。
DX推進に欠かせない安定した通信回線基盤には「QT PRO VLAN」を導入いただいており、DX推進を支える重要なインフラ基盤となっています。

7.2. 現場に特化したビジネスチャット「direct」を導入

福岡北九州高速道路公社さまは、1日あたり18.8万台もの交通量がある福岡都市高速道路を維持管理しています。

2019年7月の九州北部豪雨の際に同社で課題となったのが、自然災害や突発的な交通事故による被災復旧のための迅速かつリアルタイムな情報共有です。そこで、現場に特化したビジネスチャット「direct」を導入。大幅な業務効率アップとサービス向上を実現しています。

7.3. 他局に先駆けてリモコンサーバーのクラウド化を実施

テレビ西日本さまはフジテレビ系列の基幹局として多彩な放送事業を展開しています。

『放送業界の「DX推進」をリードする』をコンセプトにさまざまな施策に取り組んでおり、他局に先駆けてリモコンサーバーのクラウド化を実施しました。これにより堅牢かつ柔軟な監視/制御環境を実現するとともに、多様な施策を検討するための足がかりとなっています。

8. まとめ

今回は、DXの定義やIT化との違い、推進するメリットと具体的な取り組み方法などを紹介しました。

DX(デジタルトランスフォーメーション)は日常のさまざまな側面でIT技術を活用し、世のなかをより効率的に変えていこうという概念です。特にビジネスシーンにおいては、IT技術を活用することで企業における新しい価値の創出を図ることを指しています。

QT PROでは、ビジネスチャットやペーパーレスからセキュリティサービスやデータセンター、クラウドサービスなど、DX促進のためのさまざまなサービスを提供しています。DX推進の際にはぜひQT PROのサービスをご利用ください。