ネットワークとは?わかりやすく仕組みや種類、構築方法を解説
公開:2023年11月15日
我々にとって欠かせないインフラのひとつであるネットワーク。しかし、そもそもネットワークとはどういう意味を持ち、どのような仕組みで成り立っているものなのでしょうか。また、私たちが安全にネットワークを利用・構築するためには何に気をつければよいのでしょうか。
この記事では、ネットワークの基礎や仕組み、種類や構築方法をわかりやすく解説します。
目次
1. ネットワークとは?
人やモノが網の目のように相互につながりあっている状態を指す「ネットワーク(Network)」とは。
ITの世界では主にコンピューター同士をつなぐコンピューターネットワークのことを指し、私たちはこのコンピューターネットワークを利用することで、世界中の情報を見つけたり世界中の人とつながったりすることができます。
近年では、パソコンやタブレット、スマートフォンなどさまざまなデバイスを利用してWebサイトや動画などを閲覧するのが当たり前になっていますが、これらができるのは、ネットワークを介して世界中のコンピューターと接続できるようになっているためです。
1.1. ネットワークの用途
ネットワークは幅広く利用されています。例えばWebサイトや動画の閲覧、電子メールやSNSでの情報発信・収集、ネットショッピングやオンラインバンキングの利用など、その用途はさまざまです。近年普及が進む家庭用のIoT製品も、家電をネットワークに接続することで遠隔操作を可能にしたものです。
このように、私たちが普段何気なく利用しているサービスの多くにネットワークが用いられています。
1.2. ネットワーク技術が発展、普及した背景
コンピューターネットワークを世界全体に広げ相互通信を可能とする「インターネット」は、アメリカでは1967年、日本では1984年に登場します。しかし、当時はコンピューター自体の価格が高く利用者が限定されていたため、大学や研究機関など極めて狭い範囲での接続に限られていました。
1990年代には急速に情報通信技術が発達し、Windows95の登場などでコンピューターの利用者層が広がっていきます。それでも当時はネットワークの通信速度が十分ではなく、多くのユーザーは特定の発信者から情報を受け取るだけの利用が一般的でした。情報の発信者が固定されていたこの時代は
「Web1.0」と呼ばれています。
2000年代に入ると、従来のダイヤルアップ接続と比べて安価で高速な通信ができる「ADSLサービス」が普及し、一般ユーザーでもホームページを公開したりSNSで情報発信をしたりすることが可能になりました。2000年代中盤からの約10年間で安定したネットワーク環境が整備されたことで、ユーザーは情報を受け取るだけでなく自ら情報を発信できるようになりました。この時代を「Web2.0」と呼びます。
その後、2010年代にはスマートフォンなどのモバイル端末が急速に普及し、光通信技術を用いたより高速なネットワーク環境の発展につながっていきます。現代では必要不可欠な存在となったネットワークですが、このような経緯を経て少しずつ高速かつ安定したネットワーク環境が整備されてきました。
2. ネットワークを成り立たせる仕組み
では、ネットワークとは具体的にどのような仕組みで構成されているものなのでしょうか。その仕組みを解説します。
2.1. 共通の通信規格「プロトコル」
ネットワークの世界では、「プロトコル」と呼ばれる共通の通信規格が定められています。
例えば異なる言語を使う人同士で会話をしても意思疎通が難しいように、ネットワークでつながるコンピューター同士も通信の規格が異なると正常な通信ができません。そこで「この通信はこの規格でおこないましょう」という共通の規格を定めたのがプロトコルです。
プロトコルに準拠して通信することで、異なるコンピューター同士、機器同士の相互通信が可能になります。
ちなみにプロトコルには複数の種類がありますが、現在インターネットの通信で主に利用されているのは「TCP/IP」と呼ばれる規格です。
2.2. 住所の役割を果たす「IPアドレス」
TCP/IPでは、ネットワーク上で機器を特定するIPアドレスを用い「パケット」と呼ばれるデータを送受信することで通信がおこなわれます。
例えるなら手紙を送る際、手紙の送り元や送り先の住所の役割を果たすのが「IPアドレス」、手紙自体の役割を果たすのが「パケット」だと考えるとよいでしょう。
IPアドレスには、インターネット通信が可能な「グローバルIPアドレス」と、特定のネットワーク内や用途でしか利用できない「プライベートIPアドレス」の2種類があります。
2.3. 機能を7層に分けて整理する「OSI参照モデル」
データ通信をおこなう際の国際的な標準モデルに、OSI参照モデルがあります。
OSI参照モデルでは、通信の機能を7つの階層に分けて定義しています。それぞれの階層別の機能を解説します。
層 | 名称 | プロトコル例 |
---|---|---|
7 | アプリケーション層 | HTTP |
6 | プレゼンテーション層 | 文字コード |
5 | セッション層 | TLS |
4 | トランスポート層 | TCP/UDP |
3 | ネットワーク層 | IP |
2 | データリンク層 | Ethernet |
1 | 物理層 | UTP |
左右にスクロールできます
2.3.1 アプリケーション層
「アプリケーション層」とは、アプリケーションが通信をする際のプロトコルを定義する層です。WebアプリケーションではHTTP、メールソフトでのメール送信ではSMTPなど、アプリケーションの動作に応じてプロトコルを制御し、接続をおこないます。
2.3.2 プレゼンテーション層
「プレゼンテーション層」とは、通信するデータの表現形式を定義する層です。データには複数の文字コードやデータの圧縮方法が存在していますが、通信をおこなう同士でこれらが一致していないと、文字化けが起きたりデータの破損が発生したりします。通信する機器同士でデータの表現形式を一致させる役割を担うのがプレゼンテーション層となります。
2.3.3 セッション層
セッション層とは、通信の開始から終了までの接続方式や手順を定義する層です。通信が正常に完了するまで接続を維持しつつ、「SSL/TLS」など、安全な接続をおこなうためのセキュリティ機能も担うのがセッション層にあたります。
2.3.4 トランスポート層
「トランスポート層」とは、通信の品質を定義する層です。トランスポート層には主に「TCP」と「UDP」があります。
「TCP」は通信をおこなう同士でコネクションを張ることで信頼性の高い通信を可能にします。「UDP」はコネクションを張らないため信頼性が劣るものの、高速な通信が可能という違いがあります。
ファイル転送をおこなう場合は信頼性の高い通信が必要なためTCP、動画ストリーミングをおこなう場合はリアルタイムで高速な通信が必要なためUDPなど、用途に応じて品質をコントールするのがトランスポート層の役割です。
2.3.5 ネットワーク層
「ネットワーク層」は、異なる複数のネットワーク間の通信方法を定義する層です。IPやARPなどのプロトコルを用いて、送信元から送信先の端末までの通信をどのような経路でおこなうのかを選択します。異なる複数のネットワークを経由する通信元と通信先、および途中経路の機器をネットワークで紐付けるのがネットワーク層の役割です。
2.3.6 データリンク層
「データリンク層」は、同じネットワーク内で直接接続された機器の通信方法を定義する層です。”Ethernet”と呼ばれるプロトコルを用いて、機器固有に割り当てられたMACアドレスで機器を識別して通信をおこないます。ブリッジやL2スイッチで構成された同一ネットワーク内の通信元と通信先、および途中経路の機器をネットワークで紐付けるのがデータリンク層の役割です。
2.3.7 物理層
「物理層」は、コネクタの形状や通信速度、信号の種類など物理的な接続方法を定義する層です。
UTP/STPのLANケーブルや光ファイバーなど、接続方法に応じて機器の物理的な接続をおこなうのが物理層の役割です。
3. ネットワークの種類
ネットワークは複数のコンピューターを相互に接続するものですが、接続対象に応じて主に4つの種類に分けられます。
3.1. LAN
「LAN(Local Area Network)」は、オフィス内や自宅など同一のエリア内で構築される小規模なネットワークです。LANにはLANケーブルを用いて有線で機器を接続する「有線LAN」と、無線アクセスポイントを使って無線電波で機器を接続する「無線LAN」があります。
有線LANは比較的安定した通信が可能ですが、物理配線が必要なため利用範囲が限られます。一方、無線LANは電波が届く範囲であればどこでも接続ができますが、電波の遮断物や電波干渉により通信が不安定になることがあります。
3.2. WAN
「WAN(Wide Area Network)」は、通信事業者のネットワーク回線を利用して複数エリアの機器をつなぐ大規模なネットワークです。複数拠点でLANを構築している企業がLAN同士で通信をおこなえるようにするためには、このWANを構築する必要があります。
具体的なWANの構築サービスについては、QT PRO VLANをご覧ください。
3.3. イントラネット
「イントラネット(Intranet)」とは「Intra(内部の)」と「Network(ネットワーク)」を組み合わせた言葉で、主に社内ネットワークを指します。IDS/IPSやFWなどのセキュリティ機器を使って社外のインターネットと分離されるのが一般的です。社内で接続されている機器でのみアクセスが可能なため、社内の情報共有や内部情報の管理に利用されます。
社内ネットワークの概要や構築方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
3.4. インターネット
「インターネット(Internet)」は、世界中の機器を相互に接続している巨大なネットワークです。私たちは、パソコンやスマートフォンなどからインターネットに接続することで、世界中のさまざまなサービスを利用できます。
インターネットを利用する際にはグローバルIPアドレスやドメインなどのインターネット資源が必要であり、どの国がどのインターネット資源を利用するのかを明確にしておく必要があります。
このインターネット資源の割り当てを管理しているのが、非営利法人の「ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)」です。ICANNには世界各国から関係者が参加しており、日々インターネット資源を適切に管理しています。
4. ネットワークの設計・構築に必要な要素
ネットワークの設計・構築に必要な要素には、主に「コンピューター」「ネットワーク機器」「伝送媒体」の3種類があります。
コンピューターは、パソコンやサーバー、タブレット、スマートフォンなど、エンドユーザーが直接操作する端末です。
ネットワーク機器は、ルーターやスイッチなど、通信するコンピューター同士の経路となる機器です。インターネットに接続する場合には、通信事業者のONUやモデムなども必要になります。
コンピューターとネットワーク機器を接続し、データを伝送する媒体となるのがLANケーブルや無線LANの電波です。伝送媒体を用いてコンピューターとネットワーク機器を接続し、ネットワーク機器に適切な設定を投入することで、ネットワークを設計・構築できます。
4.1. より安全なネットワークの構築に必要な要素
コンピューター、ネットワーク機器、伝送媒体の3つがあればネットワーク自体は構成できます。しかし、安全にネットワークを利用するためにはセキュリティ対策が必要不可欠です。
ここでいう「安全なネットワーク」とは、不正アクセスによる情報漏洩やコンピューターのウイルス感染を防ぐためにセキュリティサービスを導入することや、通信内容の窃取や改ざんを防ぐために専用回線を利用することなどが該当します。
コンピューターとネットワークのセキュリティについて、ブログで詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
5. 自社に合う社内ネットワーク構築のポイント
どのようなネットワーク構成が利用しやすいかは、企業の特性によって異なります。自社に合う社内ネットワークを構築するために、まず利用シーンやセキュリティ要件を明確にしましょう。具体的には以下のポイントをおさえることが有効です。
- 有線と無線どちらの接続が適しているのか
- 利用エリア、接続機器数、通信量をふまえて十分なネットワーク性能になっているか
- 出張やテレワークなどで社外から社内ネットワークへのアクセスが必要か
- 社内ネットワークの利用に際してどのようなセキュリティリスクが想定されるか
自社に合った社内ネットワークを構築する際のポイントは、以下の記事でも詳しく解説しています。
6. ネットワーク構築とあわせて知っておきたいこと
ネットワーク構築とあわせて知っておきたい「情報セキュリティ」と「VPN(仮想化)」についても解説します。
6.1. 情報セキュリティ
「情報セキュリティ」とは、機密性・完全性・可用性の3つの基本要素をもとに企業の情報資産の管理におけるリスクを洗い出し、適切なリスク対策を講じることです。
情報セキュリティの観点で守るべき情報資産とセキュリティリスクを明確にし、ネットワーク構築においてどのような対策をおこなえるかを考えれば、よりセキュアなネットワーク構築が実現します。
情報セキュリティについては以下の記事でも詳しく解説しています。
6.2. VPN
「VPN」とは”Virtual Private Network”の略で、仮想的にプライベートなネットワークを構築する技術です。VPNを用いれば、接続経路内で通信内容が暗号化され、万が一通信を傍受されても通信内容が読み取られなくなります。このような特徴により、自宅や出張先から社内ネットワークに安全に接続する際に多く用いられます。
VPNについては以下の記事でも詳しく解説しています。
7. ネットワークに関するよくある質問
最後に、ネットワークに関してよくある質問にお答えします。
7.1. インターネットとネットワークの違いはなんですか?
ネットワークはコンピューター同士を接続する仕組みを指します。
一方、インターネットは世界中にある一つひとつのネットワークを相互に接続した、巨大なネットワークのことです。
7.2. ネットワークの利点・メリットはなんですか?
ネットワークがあれば、ネットワークに接続されている機器間で相互に通信ができるようになります。
Webサイトの閲覧や電子メールのやり取りなど、幅広い用途にネットワークが利用されています。
7.3. なぜネットワーク障害が起きるのですか?
ネットワーク機器やネットワーク機器をつなぐケーブルにトラブルがあったり、やりとりする情報量が多かったりすると、サーバーなどコンピューターの内部でエラーが発生しネットワークが切断されることがあります。こうした要因によりネットワーク障害が発生します。
ネットワーク障害を防ぐには、定期的なメンテナンスや複数のネットワーク経路をもたせる冗長化などの取り組みが重要です。
8. まとめ
ネットワークはいまや企業・個人を問わず、すべての人にとって欠かせないインフラの一つとなっています。一方、通信量は時代が進むほどに増加し、サイバー攻撃は日々複雑化しています。
増加する通信量に耐えうる安定した通信や、サイバー攻撃による情報漏洩や損害など、多くのリスクに備える必要があるでしょう。
QT PROでは企業・組織向けに、安全にご利用いただけるネットワーク構築サービスを展開しています。
専用回線を通すことで一般的なブロードバンドよりも安定・安全にインターネットをご利用いただける「QT PROインターネットアクセス」、提携しているデータセンターやパブリッククラウドを社内だけでなく出張先などでも快適に利用できるVPN「QT PRO VLANサービスワイド」などがあります。
お客様のご要望や環境に合わせ、最適なネットワークをご提案します。ぜひお気軽にお問い合わせください。