第18回 従業員32名の会社が就職ランキングでベスト10入りした秘密とは?

  • 本記事は2018年8月のメールマガジン配信記事です。
  • 株式会社石井事務機センター様は現在、株式会社WORK SMILE LABO様へ社名変更しております。

さて、前回は「テレワークという未来行の列車に「乗車するべき10の理由」」についてお送りいたしました。テレワークという働き方が「働き手」「企業」「地方」それぞれにメリットをもたらすこと、企業がテレワークに本腰を入れて取り組む大切さを森本さんは強調していました。70年ぶりの歴史的な改革といわれている働き方改革法案も成立して、労働者の働く環境は刻々と変化を遂げていきそうです。

第18回は、「従業員32名の会社が就職ランキングでベスト10入りした秘密とは?」をお送りします。岡山県にある株式会社石井事務機センターでは、全社員32名にテレワークを導入した結果、山陽新聞がまとめた「地場企業の希望就職先ランキング」で岡山県内9位を獲得する人気の企業に。支持を集めることにつながった同社のテレワークについて、石井代表に話を伺いました。それでは、お付き合いください。

1. 創業100年超の老舗が選択したテレワークという働き方

従業員32名、そのうち7割の24人が外勤営業社員、それでもテレワークを活用して業績を伸ばし、学生の希望就職先ランキングで県内ベスト10入りする企業がある。岡山市南区の株式会社石井事務機センターだ。
この少人数でどうやって実現したのか、どんな効果が生まれているのか。そんな疑問を抱きながら、福岡市中央区で開かれたQTnet主催「働き方改革セミナー」で登壇した石井聖博代表取締役の話を聞きにいった。

創業100年超の老舗が選択したテレワークという働き方

石井さんは会社の紹介から始めた。1911(明治44)年創業の老舗、元々は筆や墨を扱う文房具店だったという。石井さんは4代目で、2012年に家業の会社に入り、2015年に代表になった。
事務機器は企業にとって経費節減の手近な手段となりやすく、そのため競合同士の価格競争が激しい。代表に就任した石井さんは危機感を強め、大胆な業種変更を決断した。「ものを売るのではなく働く環境を良くして、そこにお金を出してくれるようにしようと。それで業種を『笑顔あふれるワークスタイル創造提案業』と変えました」と石井さん。
同時に、自社も顧客にまねしてもらえるような働き方にしたいと社内で商品や働き方のルールをいろいろ試して、いいものは顧客に提案した。そのひとつにテレワークがあったのだ。

2. 内勤の在宅勤務からスタート、好評で外勤にも導入へ

直接のきっかけは、小さな子どものいる従業員がいたことだ。石井さんは「子どもが病気になると保育園は預かってくれないし、インフルエンザなら1週間は休まないといけない。30名の会社なので、1人いないと業務に影響が出て、職場の人間関係も悪くなった」と振り返る。

内勤の在宅勤務からスタート、好評で外勤にも導入へ

その解決策として代表就任早々にテレワークを導入した。
導入当初は内勤が対象の在宅勤務だった。在宅勤務だと、通勤時間が不要になり、仕事が終わるとすぐに子どもと遊ぶ時間がとれる。また、昼の休憩時間も家なら余った時間で家事などもできる。
最初は子どもの病気などイレギュラー時の対応策としてスタートしたが、導入してみると、社員から「これ、いいですね」との声が返ってきたので、内勤全員に導入したのだという。
一方、石井さんは「家でやると仕事の効率が下がると思い込んでいました。社員から『在宅ワークで(他の社員に)申し訳ない』という要望もあって、時給を100円下げていたんです。やってみた結果、下がるどころか生産性が上がりました。すぐに給料も元に戻しました」と語る。
内勤にテレワークを導入して1年後の2016年には、外勤にも導入した。外勤は、空いた時間にカフェなどで事務処理したり、会社に寄らずに直行直帰したりする、いわゆるモバイルワークが中心だ。

3. 異例の「240%アップ」、新卒の希望就職先では「9位にランクイン」

石井さんはテレワーク導入で業績がアップしたことをデータで示した。2017年と2016年を比較したものだ。例えば16年7月の残業時間(1人当たり)39.7時間が17年7月には60.5%減の15.7時間に減少。一方で同期の売上は111%、粗利は115.1%に増加したという。

異例の「240%アップ」、新卒の希望就職先では「9位にランクイン」

こうした実績が認められ、2016年11月には総務省の「テレワーク先駆者百選」を受賞。新聞やテレビ、情報誌などに取り上げられるようになり、企業イメージはアップした。
採用力の向上という効果も現れた。地元の山陽新聞がまとめた「地場企業の希望就職先ランキング」に2年連続でランクインしたのだ。2018年春卒業対象で12位、2019年春卒業対象ではランクアップして9位に。「うちの会社以外は地元の大きな会社ばかり。なぜ入ったのかとかなり問い合わせがありました。業種的にも学生の人気は低いし、30名規模の小さな会社だし、BtoBで学生の認知度も低い」と石井さん。「しかし、テレワークを中心として働き方を変えることで、採用力の向上につながりました」と力を込めた。
新卒だけでなく、中途採用も求人票に「在宅勤務可」と書くと応募が増えた。ハローワーク経由で124%、HP経由で240%のアップだという。「数の増加だけではなく、優秀な人材の応募も増えました」と話す。

4. 石井代表が語る「中小企業がテレワークを実践すれば社会が元気に」

導入のうえで課題になったのが①労務管理③コミュニケーション③セキュリティーの3点。「大企業も中小企業もこの3つが問題になっていますが、わが社もそうでしたが、中小は基本的にお金も人も大企業ほど割けないでしょう。
なるべく安く簡単に課題を解決する方法がないかと、いろいろなツールやサービスを探しました」。その結果、既存の商品、テレワーク専用でないサービスを導入することで、月50,000円程度で導入が可能だという。
石井さんのテレワークのアイデアはどんどん広がっている。例えば、社内の人事評価制度の整備に力を入れており、1時間当たりの生産性を指標とする「人時生産性」という制度を取り入れ、それを軸に社内でのテレワーク浸透を図っているという。

石井代表が語る「中小企業がテレワークを実践すれば社会が元気に」

また、岡山駅前の商店街内の空き店舗を活用してサテライトオフィスを近くオープン予定だ。シェアオフィスとして他企業の利用も呼びかけ、商店街と地場企業の双方の活性化をもくろんでいる。
セミナーの最後に石井さんは「中小企業こそテレワークを実践するべきです。わが社も最初は女性が働きやすくなればいいなと始めましたが、採用力が上がったり、生産性が上がったり、さまざまな経営的課題の解決につながることが実証できました」と強調した。
日本の全企業数の99.7%、全従業員数の70.1%が中小企業だという。「中小がテレワークを行うことで社会の活性化にもつながっていきます。1人でもいいから、やってみることが大事です。必ず社内でいい変化、いい影響が起きます。ぜひトライしてほしい」と締めくくった。

あとがき

最初は「小さな子どものいる従業員」から始まったという石井事務機センターのテレワーク業務。導入してみると「効率が下がる」と思っていたのが「生産性アップ」したことや、「残業時間減少」「採用力の向上」などテレワークのメリットが次々に現れたということが大きいようです。これまで森本さんに伺ってきた「営業マンこそテレワーク」や「テレワークが就活生に〝響く〟わけとは?」の回と共通していますね。
第19回は「“働きながら子育て”テレワークで」についてお送りします。以前告知しましたが、テレワークを導入する企業目線のお話だけでなく、実際にテレワークを行っている方の目線もお伝えしたいと思います。ご登場いただくのは育児中と仕事を両立している女性。テレワークを始めて1年半というこの女性に、どのような職種でどういった業務をテレワークで行っているか、メリットやデメリットについて伺いました。次回もお楽しみに!

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