IaaS、PaaS、SaaSとは?
それぞれのクラウドサービスの特徴や違いを解説
公開:2023年2月14日
近年多くの企業で利用が進むクラウドサービスには、IaaS、PaaS、SaaSなどの分類が存在しています。導入時に留意すべきポイントとして「セキュリティ面」「サポート体制」「導入や運用にかかるコスト」の3点が挙げられます。しかし、それぞれどのような特徴や違いがあるのかがよく分からないため選びにくいという方も多いのではないでしょうか。 今回は、クラウドサービスにおけるIaaS、PaaS、SaaSなどの分類の特徴や違い、具体的なサービス例などを紹介します。
目次
1. クラウドサービスとは?
クラウドサービスとは、データやソフトウェア、プログラムが動作する環境のリソースなどをネットワーク経由で利用するサービスを指します。サービス提供事業者のネットワークに接続できる環境があればどこからでもサービスを利用でき、手軽にITインフラやシステムなどを構築できます。
1.1. オンプレミスとの違い
オンプレミスとは、自社内に情報システム(ネットワーク・サーバー機器など)を設置しシステム構築や運用をおこなう形態をさします。クラウドサービスとは違い独自に機材・リソースを整えるため、機能やセキュリティ設定などのカスタマイズも柔軟におこなえます。しかし、初期コストが高くなりやすく導入までのリードタイムが長くなりやすいといったデメリットもあります。
同じクラウドサービスでも、IaaS、PaaS、SaaSはそれぞれユーザー側と事業者側で責任範囲が異なります。責任範囲の違いによってカスタマイズ性も異なってきますので、自社の要件にあわせ、どのサービスを利用するのがよいか検討するとよいでしょう。
オンプレミス | IaaS | PaaS | SaaS |
---|---|---|---|
アプリケーション | アプリケーション | アプリケーション | アプリケーション |
データ | データ | データ | データ |
ランタイム | ランタイム | ランタイム | ランタイム |
OS | OS | OS | OS |
仮想化 | 仮想化 | 仮想化 | 仮想化 |
物理サーバー | 物理サーバー | 物理サーバー | 物理サーバー |
ストレージ | ストレージ | ストレージ | ストレージ |
ネットワーク | ネットワーク | ネットワーク | ネットワーク |
- 責任範囲・・・緑=ユーザー、オレンジ=事業者
2. IaaSとは?
IaaSとは「Infrastructure as a Service」の略で、一般的に「イアース」や「アイアース」と読みます。サーバーやネットワーク、ストレージなどのインフラ部分を提供するサービスで、事業者の責任範囲はハードウェアまでです。
IaaSは構築する環境に合わせてスペックを自由に選択でき、拡張性にも優れています。コスト面でもSaaSやPaaSと比べて安くなる場合が多いです。しかし、インフラ設計やミドルウェア以降の構築スキルなどの専門知識が必要になります。
2.1. IaaSの例・QT PRO IaaS
IaaSの例としては、AmazonのAmazon EC2(Amazon Elastic Compute Cloud*)、MicrosoftのMicrosoft Azure*、GoogleのGCP(Google Compute Engine*)などが挙げられます。
またQT PROでもIaaSを展開しており、パブリッククラウドで高品質かつ安定的に運用できるインフラ環境を提供しています。
3. PaaSとは?
PaaSとは「Platform as a Service」の略で、一般的に「パース」と読みます。アプリケーションの開発・実行環境を提供するサービスで、IaaSのインフラ環境に加えてOS、ミドルウェアまでが事業者の責任範囲となっています。
IaaSと比べてインフラ面のリソースや利用できる言語に制約はあるものの、開発環境を素早く構築しアプリケーション開発のリードタイムを短縮したい場合に便利なサービスです。
3.1. PaaSの例
PaaSの代表的なサービスとしては、AWS Elastic Beanstalk*、Azure App Service*、Google App Engine*などがあります。
4. SaaSとは?
SaaSは正式名称を「Software as a Service」と書き、「サース」と読みます。インフラからその上で動作するミドルウェア、アプリケーションまでを一括で提供するサービスです。ユーザー側の責任範囲はデータのみで、その他は事業者の責任範囲となります。
アプリケーション内の設定などはユーザー側でも変更できますが、インフラやミドルウェアなどの変更は実施できない場合が多く、カスタマイズ性はIaaSやPaaSに比べれば劣ります。利用したいサービスが明確で細かい変更は不要な場合には、すぐに利用ができるSaaSが便利でしょう。
4.1. SaaSの例
SaaSの代表的なサービスとしては、Gmail*やSlack*、Salesforce*、Dropbox*など多岐にわたります。インターネット経由で提供されているITツールの多くがSaaSに含まれます。
QT PROでは、テレワークやリモートワーク時に便利なインストール不要のWeb会議システムやビジネスチャットツールといったSaaSを提供しています。また、そういったSaaSへの接続に適したVPNも提供しています。
5. DaaSとは?
DaaSとは「Desktop as a Service」の略で、一般的に「ダース」と読みます。提供事業者により若干定義が異なる場合がありますが、多くは仮想のデスクトップ環境を提供するサービスです。自社のサーバーで仮想デスクトップ環境を構築するVDIのクラウド版と考えるとよいでしょう。
DaaSにはパブリッククラウド、プライベートクラウド、バーチャルクラウドの3種類があり、主な違いは以下のようになります。
- パブリッククラウド
クラウドサービス事業者の仮想デスクトップサービス上の一部を契約して利用 - プライベートクラウド
クラウドサービス事業者の独立したサーバー上で仮想デスクトップを利用 - バーチャルクラウド
クラウドサービス事業者が提供するIaaS・PaaS上で仮想デスクトップを利用
それぞれコストやセキュリティ性、カスタマイズ性などが異なるため、自社の要件にあわせてどの形態のDaaSを導入するか検討しましょう。
5.1. DaaSの例
DaaSの例として、Amazon WorkSpaces*、Microsoft Windows Virtual*などがあります。バーチャルクラウドはAWS*やAzure*などクラウドサーバー上に自社で仮想デスクトップサービスを導入する形式です。
6. NaaSとは?
NaaSは「Network as a Service」の略で、一般的に「ナース」と読みます。クラウド上でネットワークを構築し運用や監視などさまざまなネットワークサービスを提供するサービスです。NaaS提供事業者のネットワークに接続できさえすれば、ネットワーク機器の設置なしに独自のネットワーク環境を構築できるようになります。
7. MaaSとは?
MaaSは「Mobility as a Service」の略で、一般的に「マース」と読みます。これまで個別におこなっていた電車やタクシー、バスなどの交通手段の検索・予約・決済をアプリケーションを通して一括でおこなえるようにするサービスです。目的地への複数のルートや交通手段の検索・予約・決済をシームレスで実施できるようになります。
8. テレワークに適したクラウドサービスの選び方
働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大などの影響により、テレワークを導入する企業が多くなりました。それに伴い、社内のサーバーやシステムをクラウドに移行したいと考えている経営者・担当者の方も多いかと思います。ここではテレワークに適したクラウドサービスの選び方を3つご紹介します。
8.1. セキュリティ面
クラウドサービスを利用すると、自社内の情報を少なからずインターネット上に保存する必要が出てきます。企業の情報が外部に漏洩しないよう、通信暗号化やIPアドレス制限、多要素認証などセキュリティ対策がしっかりとなされているサービスを選ぶようにしましょう。自社のセキュリティ、利用要件にそってIaaS・PaaS・SaaSのいずれにするか、パブリッククラウド・プライベートクラウドのいずれを利用するのかを検討するのがおすすめです。
8.2. サポート体制
クラウドサービスでは自社でおこなっていたシステム構築・運用の一部を事業者に任せることになりますが、トラブルがあった際に自社では対応できないというデメリットも生まれます。障害発生時の切り分け調査やセキュリティインシデント発生時の初動対応など、迅速なサポートが得られるかをよくチェックしておきましょう。
8.3. 導入・運用の費用
クラウドサービスはオンプレミスと比べ、導入費用が安くなる場合があります。しかしクラウドサービスの利用規模の拡大やオプション追加費用を加えると運用コストがオンプレミスより大幅に高くなるケースもあります。クラウドサービスを利用する場合には、導入コストだけではなく運用コストも踏まえたコストパフォーマンスを考えるようにしましょう。
9. まとめ
この記事では、クラウドサービスにおけるIaaS、PaaS、SaaSなどの分類の特徴や違い、具体的なサービス例などを紹介してきました。
自社のニーズに合ったサービスを適切に選ぶためにも、ぜひこの記事を参考にクラウドサービスへの理解を深めておきましょう。
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*Microsoft Azure、Azure App Service は、米国 Microsoft Corporation およびその関連会社の商標です。
Amazon Web Services、AWS、アマゾン ウェブ サービス、Amazon EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)、AWS Elastic Beanstalk、WorkSpacesは、米国および/またはその他の諸国における、Amazon.com, Inc. またはその関連会社の商標です。
GCP(Google Compute Engine)、Google App Engine、Gmailは、Google LLC の商標または登録商標です。
SlackはSlack Technologies,Incの商標および登録商標です。
Salesforceは、salesforce.com,Inc.の商標または登録商標です。
Dropboxは、米国Dropbox, Inc.の商標または登録商標です。
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